夢見

 

ゴールデンウイーク中、変な夢をみるためにバナナとチーズを買った。

 

一リットルの煮立ったお湯にバナナをぶつ切りにしたものをぶち込んで濾した出汁を飲むと変な夢を見れるらしい。チーズは「スティルトン」というブルーチーズで変な夢界(そんなものあるかわからないが)では有名なものだ。このチーズを食べてから寝た70%のひとが変な夢を見たという。変な夢というのは明晰夢とかそういう大それたものではなく、いつもより鮮やかでヘンテコな内容のものが見れるそうだ。

わたしは一晩目にバナナの出汁、二晩目にスティルトンを仕込み就寝した。内心かなりワクワクしていた。わたしは夢を見るのがだいすきなのだ。夢は、無料で観れる3Dナンセンス映画だと思っている。できることなら毎晩覚えておきたいし、筒井康隆のパプリカの世界にもかなり憧れがある。高校生のとき、夢日記をつけていて現実と夢の境目がわからなくなった時期があり今では意識的に夢を記憶することはやめたが、覚えていればかなり詳細にメモるくらいにはすきだ。夢で行く場所は大抵決まっていて、だいたい海か水辺にいる。自分のまま水辺にいることもあるし、登場しないこともあるし、人間ではない生き物の場合もある。海の夢はたいてい楽しくうつくしい場合が多い。もうひとつは三角錐を逆さまにしたようなものすごく不安定な超高層ビル(今期の名探偵コナンの崩壊しかけたビルのような感じ)の屋上で必死に走り回ってバランスをとる夢だ、最近はあまり見なくなった。

わたしは上記パターン以外の夢を期待して眠りに落ち、そして夢は見なかった。起きた瞬間泣いていたり、自分の笑い声で起きたり、夢の中で起きてまた夢が覚めるような入れ子構造の夢(一度だけ見たことがあるけど、とても不思議なものです)をみるわけでもなく、ただただ快眠だった。ゴールデンウィークのエンタメはほぼバナナとチーズにかかっていたというのに。こんなのひどいよ、ふんだ!

 

髪の毛を切ってもらって、おなじ歳の美容師の女の子に「切った髪を誰かに見せにいくのって、かわいいですね」と言われた。そういうものをかわいいとおもう感覚を忘れないまま、わたしは明日、一年分おばさんになる。いわゆるアラサーだ。アラサー、派遣事務、学生、未婚、実家住まいという文字に起こすとヤバイ肩書きのおばさんになる。二十五歳はアラサーのインターンみたいなもののような気がする。「まだ足は浸かってないだろ」と思っているこの発言が老いに抗っていてちょっとダサい。わたしはずっとずっと、ちょっとダサい大人なのかもしれない。大人になりきれなかった子どもの部分が腐って、だんだんダサさという臭気を放つのだと思う。